そして、出した結論が「描けるものを描こう」だった。描きたいものを描くことは、あふれるアートの情報から選別するだけの作業に過ぎず、「自分の人生が、そのまま出るものとは違う」と思った。
「すべて成り行き」
描けるものを描こう、と心に決め、最初にスケッチしたのはサイだ。美大時代の教え子が開設した事務所の壁面にサイの家族を描いた。金の縁取りをして、ショッキングピンクに塗るつもりだったが、試しにまずワインレッドで下塗りしてからピンクを上塗りすることにした。
すると、ワインレッドのサイを見た友人らがみな口をそろえて「カッコええなあ」と褒めちぎった。元来褒められることが嫌いではないキーヤンは、ワインレッドのサイに陰影をつけ、記念すべき処女作を完成させた。これが現在の壁画のスタイルの原型になった。
絵を描くのにイメージはいらないという。手と体で描いて現実にぶち当たって解決する。「すべて成り行きや」。それがキーヤン流の生き方でもある。(田中幸美(さちみ)、写真も/SANKEI EXPRESS)