≪頭上覆い尽くす「火の鳥」 圧倒、ただ圧倒≫
現地に到着した夜のこと。泊まっていた民宿から外へ出ると、なんとオーロラが出ていた。
風にそよぐようにゆっくりと揺らめくグリーンのカーテン。感動が全身を駆け巡った、と言いたいところだが、現実は違っていた。何の感動もなかったのである。初めて訪れた憧れの地で最初に見た大きくて明るいオーロラ。これで感動しないはずはないのであるが、実際には冷静に眺めていただけだった。
もちろんオーロラのせいではない。原因は自分だ。翌日に控える大一番のことで頭がいっぱいで、とてもオーロラを楽しむ余裕がなかったのだ。そのときの映像は頭には残っているのだが、残念ながら心にはとどまっていない。
一生の出合いを犠牲にしてまで臨んだ入学交渉はというと、肩すかしのような結果だった。あっさりと入学が認められたのである。どうやら最初の試験の点数しか確認していなかったらしく、2度目の点数を伝えるとすんなり合格となってしまった。7点足らなくてもオーケー、というおおらかさがあの時の自分にあれば、と今さらながらに思う。(写真・文:写真家 松本紀生/SANKEI EXPRESS)