芥川賞を受賞した小野正嗣(まさつぐ)さん(右)と直木賞を受賞した西加奈子さん=2015年1月15日、東京都千代田区内幸町の帝国ホテル(宮崎裕士撮影)【拡大】
≪小野さん 他界した兄への思いも込めて≫
「芥川賞の候補が4度目だと知って、娘は『じゃあ3回も落ちたの?』って。ハハ」。冗談交じりの巧みな話芸で、周囲を笑いの渦に巻き込む。率直な物言いの小学生の娘ら1男3女に囲まれて、「いつも鍛えられていますからね」と笑みを見せる。
カリブ海の仏語圏文学の研究で知られ、現在は立教大で批評理論などを教える。創作願望が頭をもたげたのは大学院時代。大江健三郎や中上健次といった「土地の力」を見つめた作家を愛読し、海外作家の原書にも浸るうち「自分でも書いてみたい」と筆をとった。濃密な作品世界は、生まれ故郷である大分県の最南端、リアス式海岸に縁取られた小さな集落の風景と重なる。「とびきり面白いお話をしてくれるおじさんやおばさんとか、存在自体が嘘のような変わった人たちがたくさんいて、都会とは違う独特な時間が流れている。一つの土地を掘り下げていくことで何か普遍的なものを描けたら」