【メディアと社会】
イスラム教の預言者ムハンマドの風刺画を掲載してきたフランスの週刊紙「シャルリー・エブド」のパリの本社で起きた銃撃テロ事件は、メディアの表現の自由がどこまで許されるのかという世界的な議論を巻き起こした。日本でも、事件後に発行された最新号のムハンマドの風刺画を転載するかどうかの対応が、新聞社によって分かれた。
現地のフランスでは政府と民衆が一体となって全土で約370万人が参加した大抗議デモが行われ、日本を含む自由主義諸国政府も、反テロリズムで足並みをそろえている。一方、イスラム諸国やイスラム教指導者らはテロに反対したながらも、ムハンマドを描くことは教義で許されないとしてシャルリーとその賛同者を非難している。
自由と責任あってこそ
この問題は、健全な人間社会を維持していく上で情報環境の確保が不可欠であり、そのためには「自由で責任あるメディア」の確立が欠かせないという言論・表現の根本に関わる。にもかかわらず、議論の多くが全体構造の一部だけを取り上げ、これまでと同じ議論が繰り返されているように思える。