人通りの多い交差点に立つ雑誌「ビッグイシュー日本」(1冊350円)の販売者、菅野さん(左)と一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる=東京都文京区・本郷三丁目の駅前交差点(山下元気さん撮影)【拡大】
見えない貧困層が増加
お話を聞いている間、菅野さんが62歳で他界した自分の父と重なった。自分より他者を優先するお人よしだった。造船業の下請け会社を設立し、自らも職人として働きに働いた。しかしバブルの崩壊や体調不良で、晩年は娘である私が世話をした。父が家族の縁が薄い境遇だったらどうなっていたのだろう…と考える。ホームレスの人は特別に怠け者でも、だらしないわけでも、頑張らなかった人でもない。特に今の時代、まったく他人ごとではないと思う。
現在、ビッグイシューは札幌から鹿児島まで日本全国で販売されている。佐野さんによると、販売者として登録している人は全国で約140人。そのうち東京には約50人がいる。年齢は30~80代まで幅広いが、中心は50代で、ほぼ男性。延べ人数は10年間で1800人弱に及ぶが、リーマン・ショック時をピークとして路上生活者は少しずつ減ってきているという。生活困窮者の増加が社会問題になっているにもかかわらず、路上生活者が減っていることについて、佐野さんは「見えない層が増えている」と指摘する。