人通りの多い交差点に立つ雑誌「ビッグイシュー日本」(1冊350円)の販売者、菅野さん(左)と一般社団法人「Get_in_touch」理事長の東ちづる=東京都文京区・本郷三丁目の駅前交差点(山下元気さん撮影)【拡大】
以前は、菅野さんのように地方から集団就職で上京し、日雇い労働者となり、バブル崩壊後に職を失うと生活困窮して路上生活というパターンが多かった。けれども今は変わった。佐野さんは「困窮状態にいる若い人は増えていると思うが、菅野さんのような土木作業員の経験もなく、『路上で寝るのが怖い』という人が多い」と分析する。土木・建築現場では人手が足りていない状況もあるが、障がいがあったり、ホームレス状態になるまでに精神疾患を抱える若者も多く、そういった若者が「ガテン系」で働くのは不可能に近い。「路上は社会問題の最前線だなといつも思います」と、佐野さんは苦笑いする。
人生は頑張っても報われなかったり、時にはさまざまな理由で頑張れなかったりすることもある。「勝ち組・負け組」などという言葉もはびこり、簡単に敗者にされてしまう。貧困とは、社会システムのひずみでもあるのに「自己責任」を押し付けられる時代。ビッグイシューを買うことは、敗者復活の応援にもなる。読み物として内容も面白く、気づきもくれる貴重な雑誌だ。販売者さんを見かけたら、ぜひ手にとってみてほしい。(女優、一般社団法人「Get in touch」代表 東ちづる/撮影:フォトグラファー 山下元気/SANKEI EXPRESS)