白と黒の精妙なコントラストから、極寒に震えて張り詰める大気の律動が伝えられ、生と死を分かつ厳粛な摂理が沈黙の響きの中に示されていく。かつては一獲千金の夢を満載しながら凍結した湖に停泊したままの船も、氷雪に閉ざされて物憂げな時間をコーヒーショップで送るしかない若者のまなざしも、詩的な印象を運ぶ鮮烈な構図の中で静かに訴えかけ、長い独り語りが始まるかのようだ。
リブーのオフィスを代表して来日したロレーヌ・ジュレは「米国のデトロイトからメキシコのアカプルコまで行くのに際し、リブーは北のかなたのアラスカに立ち寄ることを考えました。作品はとても大がかりな寄り道がもたらした果実です。アーティスティックな景色を撮ろうとはせず、目前の現実を写すことに徹し、人間そのものを捉えています」と語り、特別な作風を備えているという。
「あえて冬に旅することを選び、白い雪の存在感の先に人間のシルエットを浮かび上がらせています。白い世界に抽象的で純化されたイメージを打ち出し、瞑想(めいそう)的な気分を含み、他の作品とは違うスタイルで撮影されています」
リブーはジャーナリストの友人と車を駆り、アラスカから2万キロの行程に乗り出した。その胸にあったものをリブーの息子、テオはこう分析する。