PK戦の幕切れは、いつも残酷である。120分間戦い抜いたあげくに広いピッチの一方で固唾をのみながら敗者を決めなくてはならない。例えばイビチャ・オシムは、ユーゴスラビアでも、日本代表監督時代も、結末を見ようとはしなかった。控室にこもってしまう徹底ぶりだった。
アジアカップ決勝トーナメントのUAE戦は試合早々に先制され、後半投入の若き司令塔、柴崎岳(がく、22)のゴールで同点とし、延長でも決着がつかず、PK戦にもつれ込んだ。
先攻の一番手、本田圭佑(けいすけ、28)が左足でふかして大きくバーを越えるミスキック。UAEも1人失敗し、5人ずつを終えて勝負がつかず、サドンデスに入っての日本の1人目は10番、香川真司(25)。右足で鋭く振り抜いたシュートはヤマを当てたGKの指先を抜けて左隅に飛んだが、そのままポストをたたいてしまった。
呆然(ぼうぜん)と座り込む香川。チームメートにうながされ、ようやく戦列に戻ってUAE6人目のPKを待ったが、勝敗が決した瞬間、再びうなだれ、座り込み、涙を流した。