【KEY BOOK】「ホーキング、宇宙を語る」(スティーブン・ホーキング著、林一訳/ハヤカワ文庫、799円)
オックスフォードを首席で卒業し、ケンブリッジの大学院で難病が発覚したホーキングは、学生時代からブラックホールにとりくんでいた。アインシュタインの重力場方程式の特別な解として知られるブラックホールは宇宙創成当初の秘密を握っていた。本書はそのブラックホールの特質からビッグバンまで降りていく当時最新の宇宙物理学のエッセンスを語って、興奮させてくれた。ときになんともいえないユーモアが滲んでいたのが忘れられない。
【KEY BOOK】「時空の本質」(スティーブン・ホーキング&ロジャー・ペンローズ著、林一訳/早川書房、1728円)
ペンローズはホーキングの博士論文の審査を担当した。その二人が量子重力理論の構築に挑戦した。二人の関心は時空(時間と空間の連続体)の究極の姿には、ふだんの時空のどこかにひそむ特異点があらわれているはずだというものだった。イギリスが生んだ二人の天才師弟が何を取り交わすかを見る刺激に満ちていて、一言も見逃したくなくなる。とくにブラックホール蒸発仮説に注目だ。