幼木や伸び盛りの若木、頭上を覆う大木。雪の重みや風で横たわった倒木も数えきれない。
「昔のウデヘは薪のために健康な木を切り倒すことはなかった。枯れたり、倒れた木を集めて火をたいたものだよ」
村人が教えてくれたそんな言葉をふと思い出す。そして一面の雪の下には、春になれば芽を出す種子がじっと待機していることだろう。冬のタイガでは樹々が織りなす静かで力強い風景に出会う。
僕は村の猟師とタイガに入るたび、ビキン川沿いの森に立つ樹々と村人の姿が重なってみえてきた。この土地で、タフに個性豊かに生きる存在感が、どこか似たもの同士に思えるのである。