わかる言葉で「残す」
こうして「Song of the Earthプロジェクト」が動きはじめた。「Song of the Earth」という地震を体験して紡がれた唄を多くの人に伝えるための、未来につながるプロジェクトにほかならない。もしかしたら、09年に即興で生まれたときから、口承される使命を帯びた言葉だったのかもしれない。
「今までも、震災のことを物語として人類は紡いできました。地名などにも知恵が残されていますよね。東日本大震災は、人類史上初めて、原発が事故を起こしてしまった地震です。それによって引き起こされた不安とか見えないものに対する恐怖とか、震災の傷を抱えながら生きていかなければならない。だとしたら、ここからはじまる物語があるはずなんです。私たちは音楽をやっているのだから、その思いを音楽で残したいと思ったんです」
「地震という言葉に抵抗を感じる人も少なくないでしょう。心に痛く響く人もいる。水の山ができることをなんと表現すればいいのか。大地が揺れることをどういう言葉で表せばいいのか。誰もが明快にわかる言葉で残さないといけないと思ったんです。人間は忘れる生き物です。忘れないと苦しみを抱えきれない。けれど、震災は忘れてはならないことなんですよね」