ただ、運営は容易ではない。生徒たちは親の帰任が決まればいや応なしに帰国する。生徒の顔ぶれは常に変化し、そのたびにゼロから教え直さなくてはいけない。利益が出るような運営もしていない。
「何のためにやってるの?」。そのような状況を知ったロシア人の専門家が、ある時こう聞くと、千野さんは「楽しいからやっています」と答えたという。ロシアでバレエを学ぶ意義について「ここは芸術の国。日本では見られないものがある。バレエだけでなく、美術館にも行って、“何が本当に美しいものなのか”を知ってほしい」と語る。
「なぜバレエをしているの?」との問いに、小さな女の子がこう答えていた。「ロシアに来たから」。そう、子供たちは分かっている。ロシアは芸術の国だということを。(モスクワ 黒川信雄、写真も/SANKEI EXPRESS)