【アートクルーズ】
絵画や写真など「平面」の領域で、将来性のあるアーティストを支援するのを目的にした美術展「VOCA(ヴォーカ)展2015」が、上野の森美術館(東京都台東区上野公園)で開かれている。時代の潮流を敏感に反映した若手34人が、個性あふれる新作を出品している。
最高賞にあたるVOCA賞には、小野耕石さん(35)=埼玉県三郷市=のシルクスクリーン作品「Hundred Layers of Colors」が選ばれた。
写真では分かりづらいが、100回ほど塗り重ねられたインクが柱のように盛り上がり、色彩が何層にも重なっているために、見る角度で色が微妙に変化する。従来の技術を超えた描法が高く評価された。版画の作品がVOCA賞を受賞するのも初めてだ。
作品のヒントになったのが、夏の夕暮れにアトリエに飛んでくる蛾(が)だったという。小野さんは1年前の展覧会に向けての文章の中で、「あのパステル調の鱗粉(りんぷん)の美しさは絵にも描けない狂気に似た魅力があった。(中略)絵具でこの触覚的な感覚にまでたどりつけないか」と書いている。