風が柔らかくなった。ぱらぱらと降りかけた雨もあがり、青空が広がる。長い冬が明けて、ようやく春が訪れたようですね…。3月15日の日曜日、鎌倉市十二所(じゅうにそ)にある真言宗鎌倉五大堂明王院の境内は午前と午後で大きく表情を変えた。
暖かな日差しに誘われ、ウグイスが気持ちよさそうに鳴き始める。そういえば今年は、3月も半ばになるまでウグイスの声を聴かなかった。境内の梅はまだ見頃、白木蓮のつぼみも大きく膨らんできた。
春の訪れによって、改めて冬の長さを確認する。
本堂の脇に「明王院は鎌倉時代から続く祈願寺(供養ではなく、祈願を主とする寺院)です」という札が立てかけられていた。
隣の客殿では、30年に一度の茅葺き屋根の葺き替えが進められている。
1235(嘉禎(かてい)元)年、鎌倉幕府四代将軍藤原頼経の発願で建立。元寇をはじめとする国家の危機を救うために数々の祈願が行われてきた。鎌倉時代に将軍発願で建てられた寺院としては唯一、市内に現存。「祈願寺なので檀家組織はありません。地元の人たちが、このお不動さんは守らなければと支えてこられ、奇跡的に残ったのです」と仲田晶弘・副住職は話す。