【BOOKWARE】
世田谷文学館の「岡崎京子展:戦場のガールズ・ライフ」を見た。ちょっとしんみりした気分で訪れたのだが、たちまち20年以上前の岡崎京子(きょうこ)の元気いっぱいの官能に浸れた。小粋で勢いのある線の原画、スクリーントーンが拡大されたプリント、あの戦闘的でアンニュイな独特の言葉たち、パンク時代のこましゃくれたプチ雑誌…。これらをうまく組み合わせ展示していた。気持ちがよかった。それでもちょっと涙ぐませた。
1996年5月19日に下北沢の自宅近くで交通事故に遭って以来、岡崎の執筆や作品発表は止まってしまった。みんなの前に姿を見せなくもなった。けれども岡崎はやっぱり元気なのだ。実際にも、手塚治虫賞の大賞受賞、『リバーズ・エッジ』『pink』などの作品のフランス語訳、多くの岡崎京子論の発表、蜷川実花による『ヘルタースケルター』の映画化など、岡崎の作品も話題も、この20年近く、決してじっとなんかしていなかったのだ。そのことは京子展を見ながら一番実感できたことである。岡崎はいまなおまだ泡立っているままなのだ。