【メジャースカウトの春夏秋冬】
「誠意」とは何か-。スカウトの世界に長く身を置き、忘れがちだったことの本当の意味を思い出させてくれた。米大リーグのヤンキースから日本のプロ野球・広島に復帰した黒田博樹投手。メジャーからの20億円超とされるオファーを断り、推定年俸4億円で古巣を選んだ「男気」で話題をさらった。何より、メジャーリーグでバリバリのローテーション投手が日本に戻ってくるのは初めてのケースだ。
スカウトという職業柄、日米の表も裏も見てきた。アメリカでは、選手が球団との交渉を代理人に一任することが多い。代理人は年俸の一部を報酬として選手から受け取る。このため、少しでも報酬額を増やしたい代理人の意向に、移籍先も左右されがちになる。いきおい、エンジョイしてプレーできる環境よりも、1セントでも高い契約額を提示するチームを選ぶことになる。そんな実態を見て、自分自身も“ビジネスライク”に徹しなければと思ってきたが、黒田投手の決断には、人間味を感じさせられた。