3月25日、イーゴリ・コロモイスキー氏(右)と膝詰め談判をするウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領。この後、大統領はコロモイスキー氏の知事職を解いた=2015年、ウクライナ・首都キエフ(ロイター)【拡大】
私財で義勇兵部隊を創設
コロモイスキー氏は、ウクライナ最大の石油ガス国営企業ウクルナフタの株式配分などで政権側と対立を深めていた。3月22日、キエフのウクルナフタの事務所に重武装の要員が詰めかけ、周囲を取り囲んだ。警察の部隊や正規軍兵士ではない。コロモイスキー氏に忠誠を誓う民兵たちだった。
昨年、コロモイスキー氏は巨額の私財を投入し、ウクライナの領土を守る義勇兵部隊を創設した。コロモイスキー部隊は、ロシアの軍事支援を受けた親露派武装勢力との戦闘のため、ドネツク州に派遣され、のちにウクライナ正規軍の一部となった。ドニプロペトロフスク州に戦火が及ぶことはなく、州の多くの住民は「コロモイスキーが、軍事的な脅威から街を守ってくれた」と感謝した。
昨年5月に誕生したポロシェンコ大統領はロシアのウラジーミル・プーチン大統領(62)とのパワーゲームに加え、汚職政治家が巣くう国家を立て直す責務が重くのしかかり、内憂外患状態にあった。今年に入り、キエフでは法の支配や中央の命令になびかないオリガルヒを排除する動きが広がっていた。コロモイスキー部隊の出来事は、権力闘争を繰り広げるエリートたちの目には「混乱の中で力をつけてきたコロモイスキーが強引に国営企業を乗っ取ろうとしている」と映った。