それにしても人間というもの、あいかわらず左をとるか右をとるかに迷っている。今夜もまたレストランやバーでどちら側に坐るのか、諸姉諸兄もたいてい迷っていることだろう。ぼくは電車に乗ってきた女子生徒たちが何度も左右を入れ替えて坐るのを見て、これは雀だなと思ったものだ。ああ、なんとも左と右は難しい。
【KEY BOOK】「新版・自然界における左と右」(マーティン・ガードナー著、坪井忠二ほか訳/紀伊国屋書店、3670円)
ぼくが「左と右」の問題に開眼させられた本。この本に出会っていなかったら、わが科学読書の系譜はかなり陳腐なものになっていただろう。自然界にはCPTという基本的な対称性の原理がひそんでいる。電荷、パリティ、時間の3つだ。この3つがさまざまに絡んで、この世界の多様性を混乱させないようにしてきた。ガードナーが素粒子のベータ崩壊の実情を書いていなかったら、今日のぼくなんてありえない。