安倍晋三(しんぞう)首相(左)と面会する拉致被害者家族会代表の飯塚繁雄さん(右端)ら=2015年4月3日、首相官邸(酒巻俊介撮影)【拡大】
再調査実施は昨年5月に日朝が合意し、北朝鮮が7月に特別調査委員会を設置。しかし当初昨年秋に見込まれた初回報告も実現しておらず、日本政府は3月末、独自の経済制裁を2年間延長した。
≪「政府への不満は限界」 亀裂回避図る≫
北朝鮮が朝鮮総連トップへの強制捜査に反発し日朝協議の中断意向を日本に伝えるなど、交渉が進展しない中、拉致被害者家族会の一部からは安倍首相への不満も漏れる。首相が家族会と面会したのは、官邸と家族会との亀裂が生じることを避けるためでもあった。国内の足並みの乱れは北朝鮮の思うつぼになりかねない。
北朝鮮の中断意向は、家族会の不安をあおり、首相側との分断を狙う宣伝工作であることは明白だった。
首相は3日、家族会のメンバーを前に「一刻の猶予も許さないとの思いで交渉にあたっていく」と強調、「それぞれの思いを伝えていただきたい」と呼びかけた。
家族会の一人は3月上旬、自民党中堅議員に電話し、「官邸前で座り込みをしようと思います」と述べ、日朝交渉の成果がないとして官邸前で抗議のデモを計画していることを伝えた。説得によりデモは見送られたが、この中堅議員は「家族会の一部が抱える政府への不満は限界に来ている」と語る。