聖骸布は、聖ヨハネ大聖堂を入って左奥に安置されている。防弾、防水、防火処理の施された分厚いガラスで仕切られており、その前には人だかりができていた=2014年5月8日、イタリア・ピエモンテ州トリノ(小野淳一撮影)【拡大】
堂内の左、奥まったところにある棺のなかに聖骸布は収められていた。シャッターを切った。「カシャ」という音が堂内に響いた。そのとき、胸にIDカードをぶらさげた男性がやってきて、ギロリとこっちをにらんだ。彼の目は怒っていた。まるで信仰などない僕という人間の心を見透かし、非難するように…。少し離れてもう一度写そうと思ったが、彼は僕を目で追っていた。最後は根負けしてしまい、その一角を離れた。
実は、聖骸布の真贋など、もはや科学の力をもってしても断定できるはずはあるまいと思っている。つまり、永遠の謎…。
きっと、よりどころがあるとすれば、見る者の心だけなのに違いない。いかがわしいと思えば偽物になり、ありがたいと思えば本物になる。ただ人型が写った古いリネンの布なのである。けれど、信仰する人がいる限りそれはいつまでも「聖骸布」として生き続けるのだろう。
【ガイド】
トリノの聖骸布(せいがいふ、サンタ・シンドネ)が4月19日(日)~6月24日(水)、公開される。詳しくは「イタリア政府観光局」「聖骸布」で検索を。