それどころか、フィッツジェラルドやローレンツらは、物質(物体)が光の速度に近づくにつれ、なんらかの変形や変化がおこっているのではないかと言い出した。当時、最高の科学哲学者だったポアンカレも、時間は絶対的ではないだろうから、局所時間とでもいうものを考えたほうがいいと提案した。
そんな議論が沸騰していた1905年の6月、ドイツの電気技師出身の青年アインシュタインが『運動する物体の電気力学について』という論文を発表した。そこには「光の速度はすべての慣性系で等しい」(光速度の不変)、「質量の運動はエネルギーに変わる」(質量とエネルギーの等価性)、「静止した観測者が運動している時計を見ると、時間が遅くなっている」(時間と空間の相対性)といったことが、シンプルな数式の展開をつかって説明されていた。特殊相対性理論とE=mc2の誕生を告げる論文だった。
E=mc2では、Eはエネルギー、mは質量、cは光速度をあらわす。何を示しているのか、あえて日常語でわかりやすく説明すれば、「物質(物体)が運動して光の速度に近づけば、そのエネルギーはだんだん最大に向かっていく」というふうになる。もうちょっと科学的にいえば「質量はエネルギーに変わりうる」となり、さらにはっきりいえば「質量には膨大なエネルギーが閉じ込められている」というふうになる。