ソメイヨシノには、花見にぴったりの大きな特徴がもう一つある。それは、たくさんの木が同時に花を咲かせるということだ。国立森林総合研究所多摩森林科学園の勝木俊雄主任研究員の著書「桜」(岩波新書)によると、ソメイヨシノは接木(つぎき)によって増殖されるため、接(つ)いだ部分から上は親木と同じ形質を持つ。つまり、染井村から日本全国に広まったソメイヨシノは、すべての個体が同じ遺伝子を持つクローンなのだ。だから、一斉に咲いて一斉に散る。
江戸時代の職人たちが育んだ品種改良のクローン技術は、いまも日本人の花見を支えてくれているのである。(佐野領/撮影:ファッションプロデューサー 大出一博/SANKEI EXPRESS)
■おおいで・かずひろ ファッションプロデューサー、SUNデザイングループ代表、葉山文化園主宰。国内外の有名デザイナーのファッションイベントや、日本の伝統美を伝承するための着物ショーのプロデュースなどを手がける。プロデュースの仕事のかたわら、写真を撮り続け、阿久悠氏とのコラボレーション写真集『華-君の唇に色あせぬ言葉を-』(産経新聞出版)を2008年発刊。毎日ファッション大賞企画賞、FEC賞を受賞。