4月5日のオリックス戦の五回、打ち上げた打球を目で追う日本ハムの中田翔(しょう)選手。この後、バットをたたき付け、悔しがりながら一塁に向かったが、打球はスタンドに飛び込んだ=2015年、大阪市西区・京セラドーム大阪(山下香撮影)【拡大】
冷静に自分見つめ
6年前。初めて会ったのは、2年目の夏でした。大器と呼ばれながら、なかなか1軍に上がれず苦しんでいた時期でした。夕暮れの千葉・鎌ケ谷の2軍施設で、ボールが見えなくなるまで外野の守備練習を行っていたことを今でも鮮明に覚えています。その後に行った初めてインタビュー。極めて控えめという印象を持ちました。
高校時代に80本近い本塁打を放ってきた平成のスラッガーの口調はおとなしく、決してファンが喜ぶようなメディア的なものではありませんでした。「自分はまだ1軍に上がれるレベルではない」。この言葉を何度も繰り返す20歳がそこにはいました。
豪快な打棒とは対照的な言動。当時は、心を閉ざしているのかと思いましたが、今になって振り返ると納得の言葉でした。冷静に自分を見つめ、自分が超えられるハードルしか口にしない。入団間もないころから、自分の現在地を逃げずに直視できる能力を持っていたのでしょう。プロ入り後、苦労した分だけ、築き上げた基礎も強固になりました。