夜の海に数時間漂う
「不沈戦艦なんて嘘だなと思った。上甲板に大量の水が来ているんだから」
避難してもよいという「退艦命令」が出て、斜面になった艦体を滑り降り「大きな駅で乗り換えるときの階段みたいに、人に押されて海に入っていった」。艦に付着したカキの殻で背中や下半身をすりむき、左手も何かに当たり、感覚がなくなるほどのけがを負った。
「俺、泳げないんだよ」
親しかった同僚が後ろから小声でささやいてきた。どうしていいか分からず「これを持って」と木の切れ端を手渡した早川さん。一緒に海に入ったが、同僚の姿を見たのは、そのときが最後だった。
早川さんは、艦内で使っていた柔道のマットなどにつかまり、夜の海を数時間浮遊した後、味方の駆逐艦に救助された。