【国際情勢分析】
ウクライナの親欧米派、ペトロ・ポロシェンコ政権が、ロシアとの国境線沿いに「壁」を築き始めている。名付けて「欧州の堡塁(ほうるい)」。1989年の「ベルリンの壁」崩壊から四半世紀を経て、欧州には再び東西の分断線が現れつつある。
ウクライナ東部の最大都市、ハリコフから約40キロの対ロシア国境。戦車の進行を妨げる「壕」を国境線に沿って掘り、さらに監視カメラやセンサーを備えたフェンスを設置する工事が本格化していた。
対戦車壕を3年で構築
「『ある国』からの攻撃は、ここでもあり得る」。ウクライナ国境警備隊ハリコフ州隊長のアレクサンドル・クルーグ氏(37)はこう語り、「軍事的には侵攻を一時的に止める効果しかないかもしれない。それでも、こちらには対応する時間が生まれる」と説明した。
兄弟国家とも呼ばれた両国を分断する「壁」の建設は、ウクライナ東部ドネツク、ルガンスク両州の紛争で、ロシアが親露派武装勢力を支援したのを受けた措置だ。向こう3年をかけ、政府が掌握する国境の全体に対戦車壕を張り巡らせる。