「ロシア世界」保護の大義
歴史的にポーランド領だった時期が長いウクライナ西部は主にウクライナ語を話し、欧州への帰属意識が強い。他方、17世紀にロシア帝国領となった東部ではロシア語が主要言語で、ロシアへの親近感が勝る。
第二次大戦期に対ソ連パルチザン闘争を指導したステパン・バンデラ(1909~59年)を、西部ではウクライナ独立運動の闘士と見る。東部住民の多くは、バンデラをナチス・ドイツに協力した「ファシスト」と称し、「欧州との統合など必要ない、理解できない」という。
「ロシア世界」を守護する-。クリミア併合以降のウラジーミル・プーチン露政権はこんな論理を持ち出し、国内での熱狂的な支持を得た。
「『ロシア世界』は、ロシア語やロシア・ソ連文化を共有する人々や領域を指す概念だ。ウクライナ介入を正当化するために使われた」。モスクワ国際関係大のワレリー・ソロベイ教授(55)はこう指摘し、政権の意図を次のように解説する。
〈ソ連崩壊後のロシアは、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の「東方拡大」に強い反感を抱き、「譲れない一線」を設定しては破られた。ウクライナがロシアの絶対的な「勢力圏」であり、欧米が物事を決める場所でないことを行動で示す必要があった〉