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【日本遊行-美の逍遥】其の十九(東大寺・奈良市) 万民の幸せ願う「修二会」 (2/5ページ)

2015.5.11 11:20

3月12日深夜、若狭井(わかさい)からお香水を汲み上げる儀式「お水取り」が行われる。練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりとして、大きな松明(たいまつ)に火がともされる=2015年3月11日、奈良県奈良市の東大寺(井浦新さん撮影)

3月12日深夜、若狭井(わかさい)からお香水を汲み上げる儀式「お水取り」が行われる。練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりとして、大きな松明(たいまつ)に火がともされる=2015年3月11日、奈良県奈良市の東大寺(井浦新さん撮影)【拡大】

  • 「達陀(だったん)」と呼ばれる火の行法。3月12、13、14日の後夜の終わりに、火天役と水天役の連行衆(れんぎょうしゅう)が対になり、火天役が大松明(たいまつ)を、人々の煩悩を焼き尽くさんとばかりに打ち振り、引き廻す。長さ3メートルもある達陀松明を内陣で引き回し、最後に礼堂の床へ投げ倒す=2015年3月13日、奈良県奈良市の東大寺(井浦新さん撮影)
  • 修二会(しゅにえ)期間中の3月1日から14日には毎日、通常10本の松明(たいまつ)があげられるが、12日だけは、全ての練行衆(れんぎょうしゅう)が上堂するので11本の松明があげられる=2015年3月11日、奈良県奈良市の東大寺(井浦新撮影)
  • 2月23日に行われる「花ごしらえ」。十一面観音にささげる椿の花を、練行衆(れんぎょうしゅう)たちが総出でつくる=2015年2月23日、奈良県奈良市・東大寺(井浦新さん撮影)
  • 紅花の色素を沈殿させた「艶紅」を和紙に何度も塗り重ねることで、この美しい赤色を表現できる=2015年2月23日、奈良県奈良市・東大寺(井浦新さん撮影)
  • 東大寺二月堂=奈良県奈良市

 「お水取り」の発生にちなんだ故事が面白いので紹介したい。実忠和尚が、「修二会」の「六時」(後述)の行法を始めた当時、「神名帳」を読んで全国の神々を二月堂に勧請(かんじょう)した。諸国の神々が競って二月堂にやってきたが、若狭の遠敷明神(おにゅうみょうじん)だけが、釣りに興じるあまり遅刻してしまった。遅れたおわびとして、閼伽(あか)水を献納すると約束した。その瞬間、白と黒の二羽の鵜(う)が磐石を割って地中から飛び出し、2つの穴から甘泉が湧き出して香水が充満したので、石で囲って閼伽井(あかい)とした。現在、二月堂の下にある若狭井(わかさい)という井戸がそれであり、以後毎年3月12日の夜半すぎに、香水をくんで観音菩薩にお供えすることになった。そこから「お水取り」が生まれたというのである。神々の人間味あふれるエピソードは、どことなくユーモラスで、ほほ笑ましさすらある。

 ≪壮絶な祈り 1250年間絶えることなく≫

 この法会の意味は、人間の貪欲、瞋恚(しんに)、愚痴の三毒は、さまざまな罪を生み、それが心の穢(けが)れとなって蓄積され、正しいことが見えなくなる。そこでその罪障をざんげし、清浄な身心を得ることで、禍や災難を取り除き、幸福を招こうというのである。

観音菩薩と人々のあいだの媒介者 「練行衆」

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