3月12日深夜、若狭井(わかさい)からお香水を汲み上げる儀式「お水取り」が行われる。練行衆(れんぎょうしゅう)の道明かりとして、大きな松明(たいまつ)に火がともされる=2015年3月11日、奈良県奈良市の東大寺(井浦新さん撮影)【拡大】
一日一食、心身にとってかなりきつい行事に明け暮れる。「南無観(なむかん)、南無観、南無観」と繰り返される宝号。身体を投げ打つ音、そして静寂。寒さの中、身を酷使し、すり減らして祈り続けるのだ。
よく知られているのが「達陀(だったん)」と呼ばれる火と水の行法だ。3月12~14日の後夜の終わりに、火天役と水天役の練行衆が対になり、火天役は堂内で大松明を、人々の煩悩を焼き尽くさんとばかりに打ち振り引き廻(まわ)す。最後に大きな松明が礼堂の床板に打ち据えられると、膨大な火の粉が飛び散る。その様子は、華麗かつ幻想的だ。
修二会の行法は、14日の夜半に終わる。全身を酷使し、声を出し続け、炊き上げるすすで身を黒く染めながら、消耗しきった練行衆は、この「修二会」を終えた後、どのような思いを抱くのであろうか。