【KEY BOOK】「紀ノ川」(有吉佐和子著/新潮文庫、637円)
わが家には文芸誌が毎月回覧雑誌で何冊か届くようになっていた。母はそれがたのしみでよく読んでいた。『紀ノ川』については連載中から「これは上手な話やなあ」と感嘆していた。紀州九度山の家霊のような祖母の花、侠気がみなぎる母の文緒、出版社に勤めた娘の華子の三代が、どんな小さな流れも呑み込む紀ノ川のように、周囲の男たちを次々に取り込んで生き抜いていくという話だ。母の思い出の記念として、あえてここに紹介しておくことにした。(編集工学研究所所長、イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 1944年1月25日生まれ。父・太十郎、母・貴久の長男として京都冨小路の横田病院に生まれる。父は滋賀県長浜出身で呉服商を営み、母も京都の呉服商「殿定」の娘だった。「正剛」の名前は前年末に自決した中野正剛にちなんでつけられた。「松岡正剛の千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)