油彩の絵の具の扱いに失敗し、ダ・ヴィンチの壁画(中心部分)の下半分が流れ落ちてしまった。ダ・ヴィンチはやむなく創作を断念。ミケランジェロも下絵を描いた段階で、別な仕事のためにローマ教皇に呼び出されて現場を離れた。
計画は頓挫し、描きかけの壁画は放置されたが、1560年代に、ジョルジョ・ヴァザーリ(1511~74年)が壁面に新たな絵を描いたために姿を消したという。
今回、公開されるのは、ダ・ヴィンチが描いた壁画「アンギアーリの戦い」の模写(作者不明)と、ヴァザーリがアリストーティレ・ダ・サンガッロに記録用に描かせたミケランジェロの「カッシナの戦い」下絵の模写(1542年ごろ)だ。オリジナルの行方は分からず、2枚の模写が、夢と消えた両巨匠の競演を想像させる。
とくに、「アンギアーリの戦い」は、躍動感や鬼気迫る表情が、のちの戦闘画のお手本となり、ラファエロ・サンティ(1483~1520年)など多くの画家が模写したという。今回の模写は、誰が描いたのか、ダ・ヴィンチの弟子だったのか、ダ・ヴィンチは関与したのか。また、壁画は実際にどこに描かれ、今も存在するのかなど、多くの謎をはらんでいて興味深い。