ダレナは、写真の中のプラカードに書かれたスローガンを消し去ることにした。「消し去ったことで、むしろ彼らが持っていた思い、願望が強く感じられるようになった」と話す。
確かに、群衆から伝わってくる熱気とは裏腹に、白く姿を変えたプラカードが、彼らの徒労と空しさを際立たせる。
残酷さ鳴らす時計
ブルース・クェック(1986年、シンガポール生まれ)の「鏡の回廊 東南アジア・レポート」(2012年)では、たくさんの「時計」が並んでいる。針の回転するスピードはまちまちだが、正午の位置に来るとチーンとベルを鳴らす。
実は、時計はそれぞれ「世界で7秒に1人、子供が餓死する」「14秒で1ヘクタールの熱帯林が失われている」など残酷な統計を表している。刻々、鳴らされるベルの数はカウンターとつながり、バーコードをプリンターに読ませることで、レシートのように印字できる。「鑑賞者が展示室にいた間に、どれだけ恐ろしいことが起こったか分かる」と、地球環境への関心を喚起する。