サッシがいつ頃から作られたかは不明だが、8世紀から13世紀にかけて、東方からイスラム勢力を逃れたキリスト教の修道僧が住み着き、130以上の洞窟住居を構えたのが始まりといわれる。多くの岩窟教会には中世のフレスコ画が残り、マテーラ周囲からは、旧石器時代の出土品も数多く発見されている。ただ、20世紀前半までは、町は南イタリアの貧しさの象徴のように見られ、ムッソリーニの治世になっても電気さえ通っていなかった。
衛生状態が悪く、乳児の死亡率も高かったため、イタリア政府は1950年代、サッシ地区の住民を郊外に新築した集合住宅へ強制的に移住させた。その数は約1万5000人に上るとされる。その後はしばらく無人の廃虚と化していたが、150以上の岩窟教会や約3000戸の洞窟住居などの文化的資産が見直され、93年に世界文化遺産に登録されると、観光客が徐々に増えだした。今ではホテル、レストラン、工芸品の販売店などが雨後の竹の子のようにでき、洞窟住居の5分の1ほどが再利用されている。ちなみに洞窟をリニューアルした“洞窟ホテル”の料金は、概ねシングルが1泊70ユーロ(約9400円)ぐらいから、ミニスイートが1泊160ユーロ(約2万1000円)ぐらいからだ。