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50代半ばだからこそ描けた「魂の彷徨」 「界」著者 藤沢周さん (2/5ページ)

2015.5.25 18:30

魂の彷徨を描いた藤沢周さん。タイトルの意図を「結界、境界…いろんな『界』を男がさまようという意味を込めた。字面も、なんだか呪術的でしょ」と明かす=2015年5月20日(塩塚夢撮影)

魂の彷徨を描いた藤沢周さん。タイトルの意図を「結界、境界…いろんな『界』を男がさまようという意味を込めた。字面も、なんだか呪術的でしょ」と明かす=2015年5月20日(塩塚夢撮影)【拡大】

  • もう一人、影響を受けた作家として「言語以前のところで書いているすごい方」と古井由吉さんをあげた。「『藤沢くんは言葉の結晶化が早い』と言ってくださったことがあって。言語化するぎりぎりのところで耐えなきゃいけないんだ、と気づいた。今回は、それが少しできた気がします」=2015年5月20日(塩塚夢撮影)
  • 「界」(藤沢周著/文芸春秋、1200円+税、提供写真)
  • 「珠玉」(開高健著/文春文庫、473円、提供写真)

 主人公の「動き」よりも、「内面の旅」に焦点をあてた。居酒屋で隣り合った男に亡き父親を重ね合わせ(「化野」)、佐渡の荒波に今ここにいない女を思う(「宿根木」)。「ドラマにしようと思えばできるんですが、『日常』こそがドラマだと。生きるとは山の稜線(りょうせん)を歩いているようなもの。どちらに転ぶか分からない。彼岸を浮遊して、漂って、再び此岸(しがん)に戻るその揺れをきめ細やかに書こうと。小さな死のレッスンを積み重ねて、今ここに自分があることを考える…そんなことをやっていますね」

 無限性に打たれる瞬間

 本作の執筆の衝動を、「トスカ」と表現する。「若い頃は、四季の変わり目に敏感でした。アスファルトを転がる枯れ葉の音とかにはっとしてしまう。『世界の無限性に打たれている瞬間』です。これってなんだろうと思っていたとき、沼野充義さんがチェーホフを新訳されて、その文学性を表現するのにロシア語で『憂いもだえる』という意味の『トスカ』という言葉を使っていたんですね。『それに近いな』と。でも40代の後半からトスカを感じることがなくなって『もうダメかな』と思っていたのですが、50代になって、唐突に幼いころの歌を思い出したり、切迫するような感情がよみがえってきた。トスカに自失し、扉がバッと開いた感じ。ヤバイと思うと同時に、世界の秘密を捕まえられるかもしれないと感じた」

原点は「言語以前」

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