ここに注目し、製造方法を整備し吟醸酒のみを作り上げることにシフトしたのが旭酒造だ。彼らは作り手のプロフェッショナルとして、個の成熟を超え、こだわりを過去では無く未来に据えた。結果、必要と考えられた要素は徹底的に追究し、不必要と判断した要素は、迷いなくそぎ落としていったのである。
人格に宿る
重要なことは、獺祭が「売れるものとするために」最善を尽くし生まれたのではなく、「より良質な品にするために」最善を尽くし生まれたブランドである点だ。売れたことは結果論に過ぎない。つまり売れたから素晴らしいものなのではなく、最新の技術を使った酒造りに活路を見いだし、そこに職人の技と目、舌を持ち込み圧倒的な品質にまで高めたことにこそ価値がある。これこそが「伝統」の本質であると、私は思う。そして、旭酒造という法人格、3代目である社長、4代目となる副社長の個人格が三位一体となり体制を作り上げている。そう、この人格をプラットホームとして新たな伝統が紡ぎ出されているその瞬間を、われわれは獺祭という商品の中に見ることができるのである。なんという口福だろうか。(企画プロデュース会社「丸若屋」代表 丸若裕俊/SANKEI EXPRESS)