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新たな「レンズ」通し「記憶」と向きあう 「忘れられた巨人」著者 カズオ・イシグロさん (2/5ページ)

2015.6.16 16:30

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)

国家の記憶を描いたカズオ・イシグロさん。「忘れた方がいいのか、それとも…。一概には言えないが、ときには忘却が社会の崩壊を防ぐ手立てとなることもある」と考察する=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)【拡大】

  • 構想から15年。「どのようなツールで描くのが最適か、悩みました。忘却の霧を吐く竜というアイデアを思いついた瞬間、すっと筆が動き始めました」と語る、作家のカズオ・イシグロさん=2015年6月8日、東京都千代田区(長尾みなみ撮影)
  • 「忘れられた巨人」(カズオ・イシグロ著/早川書房、2052円、提供写真)

 今作、“翼”として選んだのはファンタジーという筋立てだった。舞台は6、7世紀とみられるブリテン島。雌竜が吐き出す「奇妙な霧」によって人々は多くの記憶を失っていた。老夫婦は、遠い土地に暮らす息子と出会うため、長年暮らした土地を後にする。老騎士や戦士、鬼に襲われた少年と出会いながら旅路を続けるうち、2人は自分たちが大切な記憶をなくしてしまっていることに気づきはじめる-。

 内戦きっかけに

 ファンタジー的な筋立てに目が奪われがちだが、これは「『大きな記憶』をめぐる物語」であるという。夫婦の旅路のなかで浮かび上がる、サクソン人とブリトン人の間の殺戮(さつりく)と憎しみの記憶。「私はデビュー以来、ずっと作品の中で『記憶』を扱ってきました。この作品では、国家や共同体、土地など、大きな記憶を書くことができました」

 そのテーマにたどり着いたのは、冷戦後のヨーロッパに生きる作家としての必然だった。

「メタファーとして描くことができた」

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