いまや時代はGPSによるナビ地図やグーグルマップが万能になっている。しかし地図というもの、そこに「何を読みとるか」が真骨頂で、それによって何を判断したり推理したり行動するかが引き出されてくるものなのだ。
井上ひさしの『四千万歩の男』は、56歳から72歳まで10次にわたって日本全国を測量しつづけた伊能忠敬の生涯をダイナミックにも愉快にも描いた小説だが、そこに「一身にして二生を得る」という忠敬の信念が何度も出てくる。
まさに、そうなのだ。地図とは、そこから何回でもどのようにでも「別の生涯」と「未知の世界観」を導き出せる比類ない想像力の装置でもあったのである。
【KEY BOOK】「地図の歴史」(ヴィンセント・ヴァーガ+アメリカ議会図書館、川成洋他訳/東洋書林、8100円)
地図の歴史をめぐる本は多いが、これが一番わかりやすく詳しい。歴史順、各国別に代表的な地図を解説している一方、独特の見方での分類も試みている。「環境としての地図」「探検と捜索のための地図」「ドグマ(宗教的信条)をあらわす地図」「独立をあらわす地図」「共有される過去をあらわす地図」「断片的な証拠を伝える地図」「神意があらわす地図」という見方も提供する。