ところが、ここへきて、初めて財務省が設定した弾性値はおかしい、という正論が安倍晋三首相の諮問機関、経済財政諮問会議の中で飛び出した。
経済財政諮問会議メンバーであるサントリーホールディングスの新浪剛史社長が1日の会議で、「過去の税収弾性値をみても、経済安定成長期は少なくとも1.2から1.3程度を示している。今までの中長期見通しではこれを1.0と置いていた。これは保守的すぎるため、弾性値を1.2から1.3程度にすることが妥当である」(経済財政諮問会議議事要旨から)と、言い放ったのだ。
諮問会議事務局である内閣府を牛耳るのは財務省である。「1」というのは、名目成長分だけしか税収は伸びないというわけで、経済成長しても財政再建を果たすことは不可能という財政見通しの計算根拠である。歴代の政権はその数値をうのみにし、デフレ下の消費税増税など緊縮財政路線を踏襲してきた。
実際には、景気回復期には弾性値は3~4と大きく伸びるし、低成長時でも1どころではない。岩田一政日本経済研究センター理事長を座長とする内閣府の研究会は2011年に01~09年度の弾性値が平均で4を超えるという分析結果をまとめた。ところが、当時の民主党政権は財務官僚の言いなりのまま、研究報告をお蔵入りにしたばかりか、消費税増税へと突っ走った。