≪伝統に培われた技を新しい発想に生かすと「ものづくり」の可能性が広がる≫
日本だけではなく世界の最高品質として、多くのメイクアップアーティストやメイクブランドの支持を集める「熊野の化粧筆」。その原点は日本の文化の一つである書道の筆づくりにありました。世界に誇る伝統工芸へと進化を遂げてきた影に、高度成長期の追い風と時代の波をつかんだ地域の変遷があります。
今回はそんなストーリーを探るため広島県熊野町で化粧筆づくりに取り組む尺田さんを訪ねました。
国内シェア90%を誇る化粧筆の産地、広島県熊野町。筆づくりの歴史は今から約180年前、江戸時代後期から始まりました。農閑期に出稼ぎに出た熊野の人々は、帰省時に奈良や和歌山で仕入れた筆や墨の行商をしながら家路をたどりました。その繰り返しの中で、自ら筆づくりを学び技術を村に伝える人が現れ、その熱意と村の人々の努力により、筆づくりが熊野の地に根付いたといいます。明治時代に入り、学校制度ができたことで筆の需要が高まり、地域を支える産業として大きく発展しました。1960年ごろからの高度成長期には子供の増加とともに好景気を迎えます。