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【溝への落とし物】船釣りの思い出 本谷有希子 (1/4ページ)

2015.6.29 16:00

そして今回、釣れた魚…=2015年6月14日(本谷有希子さん撮影)

そして今回、釣れた魚…=2015年6月14日(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 釣りに行かないか、と誘われた。

 それもただの釣りではない。海釣りである。ちょうど6月にみんなで沖縄へ行くと言ったら、現地の知り合いが船を出してくれる話になったらしい。

 海かぁ、と私は呟いた。正直、釣りというもののおもしろさが、とんと分かったためしがないのである。前に一度だけ、湖にブラックバス釣りに連れて行ってもらったことがあったが、その時も、私はほとんどさおには目もくれず、みんなで釣ったほうが楽しかろう、と二艘のボートをタオルでくくり付け、バラバラにならないようにせっせと精を出していたのだった。それでも、結局、同行することにしたのは、波もなく穏やかな海だと、前日に聞かされたからだ。

 船酔いで舌のもつれ?

 ところが、船が陸を離れてから十分もたたぬうちに、私はもう陸が恋しくなっていた。早々に気持ち悪くなってしまい、最初のスポットに着く前から、クーラーボックスの上でじぃっとしていることしかできなくなってしまったのだ。むろん、これでは釣りどころではない。何時頃までやるのかな。もうひとり、脱落してクーラーボックスに座っていた女の子にひそひそ聞いてみると、「いつもはこのまま夕方ぐらいまでやるみたい」という答えが返ってきたので、うへえっと声をあげそうになってしまった。それなら、あと7時間はこうしていることになる。

「したがほつえるろって、ふなよいのひょうじょうでふかえ」

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