サイトマップ RSS

【溝への落とし物】船釣りの思い出 本谷有希子 (2/4ページ)

2015.6.29 16:00

そして今回、釣れた魚…=2015年6月14日(本谷有希子さん撮影)

そして今回、釣れた魚…=2015年6月14日(本谷有希子さん撮影)【拡大】

  • 劇作家、小説家、演出家、本谷有希子さん(本人提供)

 目の前が真っ暗になりかけていると、さっきまで船の先端でグルクン(タカサゴの沖縄地方の呼称)を釣り上げていたはずのケンがやってきて、「なんか手がしびれる」と言いながら座り込んだ。見ると、ケンの顔色も真っ青だ。

 私はクーラーボックス組ができたとひそかに喜び、「吐いちゃいないよ。いっそすっきりするよ」などと、しきりに嘔吐(おうと)を勧めた。ケンはすっかり憔悴(しょうすい)しきった様子で、うんうん、とうなずいていたが、少しすると、何かに呼ばれたようにすっと立ち上がった。どうしたんだろうと目で追うと、側でさおを動かしていたシンカワさんに、ケンは声をかけ、そして、

 「したがほつえるろって、ふなよいのひょうじょうでふかえ」

 と、言った。

 「え?」とシンカワさんが聞き返した。私も、ケンがなんと言ったのか、まったく分からなかった。

 「したが、ほふれるんでふけど、ほれってふなほひのひょうじょうでふか」

 そう言って、ケンの手はぶるぶるぶるっと、電気を通されたように震え出した。人相もまるで別人のように引きつっていて、その時、ようやくこれはただごとではない、と私も気づいた。

二度の脱水症状

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

90%以上の受講生が継続。ISO認証取得で安心品質のマンツーマン英会話が毎日受講できて月5980円!《体験2回無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

ソナエ

自分らしく人生を仕上げる終活情報を提供。お墓のご相談には「産経ソナエ終活センター」が親身に対応します。

ページ先頭へ