夫との間に亀裂を抱えた主婦(「しらず森」)、不思議な思い出を抱えた自治会の副会長(「団地の孤児」)、人嫌いの老人の意外な過去と友情(「ノートリアス・オールドマン」)-。老若男女、団地に集う人々の喜びと哀しみを、さまざまなタッチで切り取った。
「僕自身、かつて訪問マッサージの仕事をしていたことがあって。団地の一室を訪れると、おばあちゃんの若い頃の写真なんかが飾ってある。一瞬の出会いだけれど、それぞれの人生の何十年分の蓄積の断片が見えてくるんです。一見平凡な人生かもしれないけれど、不思議な物語を持っているかもしれない。なんの起伏もない人生を送っている人なんて、いません。そんなふうに、それぞれの過去を知らないままに出会った人たちが、少しずつリンクしていくような物語を書きたいと思いました」