幅広いジャンルで作品を発表してきたが、今回は日常とSFのあわいを漂うような世界観。「読者の方からみれば、『この前ラーメン食べておいしかったからまた来てみたら、今度はカレーが出てきた』という感じでしょうか(笑)。でも、『自分はこう』と決めてしまうと、あとあと苦しくなる。エンタメという芯は外しませんが、ラーメンじゃなくても、きちんとおいしいカレーを出せればいいのかな、なんて」。甘くてほろ苦い、思い出味の“カレー”。次は、何が出てくるのだろう。(塩塚夢、写真も/SANKEI EXPRESS)
■いぬい・ろくろう 1971年、東京都生まれ。作家・劇作家・鍼灸師。2010年、『忍び外伝』で第2回朝日時代小説大賞、『完全なる首長竜の日』で第9回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞。『完全なる首長竜の日』は『リアル~完全なる首長竜の日~』として映画化された。著書に『塞の巫女』『鷹野鍼灸院の事件簿』など。
「思い出は満たされないまま」(乾緑郎著/集英社、1500円+税)