日蓮宗系の尼僧、鈴木日宣(すずき・にっせん)さん=2015年、千葉県内(財満朝則撮影)【拡大】
≪生きているうちに積む「功徳」≫
皆さんの中でお盆やお彼岸、祖父母の命日などにお寺やお墓参りをされる方がいらっしゃると思います。その時はお墓を掃除したりお花を供えたりするでしょう。日蓮聖人は「仏の名を唱え経巻を読み華をお供えしお香を焚(た)くことなど、皆すべて自分の一念に納めていく功徳、善根(善を生じる元)なのだと思いなさい」と述べられています。つまり仏様や亡き人を思いながら行うことのすべてが善根になるということです。皆さんにあてはめてみますと、亡くなった近しい方々やご先祖様に感謝し、心を込めてお塔婆を建て、供物をあげ、お線香を焚き、お経を読み手を合わせることなどが善根となります。その善根、善行を積むことを「功徳」といい、それをご先祖様に回してさしあげることを「回向」といいます。「子孫が自分で積んだ善根、善行を回向供養してくれている。なんとありがたいことだろう」と、ご先祖様は大いに喜んでくださることでしょう。
仏教の説く永遠の生命観では自分も過去の先祖の一人であったと考えられ、ご先祖様を回向供養することは自分自身をも供養することになります。生きている間でしか積むことのできない善根と善行を普段からも自分のため、ご先祖様のために積むことに励んでいただきたいと思います。(尼僧 鈴木日宣/撮影:財満朝則/SANKEI EXPRESS)
■すずき・にっせん 1961(昭和36)年6月、東京都板橋区生まれ。音楽が好きで中学では吹奏楽部に入りクラリネットを担当。高校生の時、豊島区吹奏楽団に入団。音楽仲間とともに青春時代を過ごす。
7年間社会人を経験したあと内田日正氏を師として26歳で出家。日蓮宗系の尼僧となる。現在は千葉県にある寺院に在住し、人間界と自然界の間に身をおきながら修行中。