黒潮の影響で、冬は温暖、夏は涼しい恵まれた環境を持つ和歌山県田辺市。6月になると山肌を覆う樹々の枝には、日差しをいっぱいに受けて赤みを帯びた大ぶりの実が収穫を待つ光景が見られます。ここでの収穫は、自然と落ちる完熟した梅を地上に張ったネットで受け止める方法。竹内幸子さんは地元企業に就職後、縁あって5代続く梅農家に嫁ぎました。ご主人の祖父は梅の改良にも取り組み、長次郎梅という品種を世に送り出したという筋金入り。農家の嫁としてつつましく尽くす日々を送りながらも、もともと器用で世の中の動きに敏感、好奇心旺盛な幸子さんには「自然のものは、自然のもので!」という思いがありました。昔かたぎで気難しいご主人はなかなかそんな話に耳を貸してはくれませんでしたが、「より良いものを作りたい」思いは同じ。何とか旧知である串本の尾鷲牧場の牛糞(ぎゅうふん)を堆肥にすることにこぎつけ、2001年の有機栽培認証の始まりと同時に取り組み始めます。化学肥料を主流に効率を求める時代には画期的なことでした。当初は有機栽培への認知度も低く厳しい状況が続きますが、いつかは時代が追いついてくる!と信じていました。最近になりようやく「オーガニック」の価値が広く認識されて「本当に続けてきてよかった」と思う日がやってきたのです。