自ら暴露した不適格性
習政権にとって当面、株価の暴落を食い止めることが最優先課題だ。中国人の個人投資家数は今回の株式ブームで急増し、共産党員数8800万人をはるかに超えている。株価引き上げの旗を振ってきた党指導部の信頼は大きく損なわれる。
株式バブルの原動力である信用取引では、住宅を担保にすることも解禁するなど、取引規制を緩和する。上場企業の半数以上を売買停止にした。人民銀行は市場向け資金供給を約束し、証券業界が共同で株を買い支える。他方で株式の新規公開を禁止した。株価指数先物を利用した空売りを取り締まる。7月1日に習政権の肝いりで施行された国家安全法では、金融危機での強権発動を可能にしている。公安当局が投機の取り締まりに動き出した。
一連の規制強化は、金融市場自由化とは真逆である。人民元は国際通貨の条件を満たさないことを図らずも、北京自らの手で暴露した。それでも、北京はSDR通貨実現に執念を燃やすだろう。そうなれば、人民元を刷って海外で自由に使えるようになるのだから。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)