今のマンションに引っ越してきたときから、住人による駐車スペースの私物化が、気になっていた。
むろん、各自が契約している白線内に愛車を収め、ひとさまの陣地にはみ出すようなまねはしない。廊下ですれ違ったときには笑顔で挨拶をしてくれる、みんな、感じのいい人たちだ。
にもかかわらず、地下の駐車スペースの、半ば開き直りとも言える、我の通しかたがすごい。まだ越してきて日の浅い私にさえ、駐車スペースを見れば、誰が古株なのか一目瞭然なのだ。
そこにあって然るべき品?
たとえば、ほこりを被った自転車が置いてある。ガットの切れたテニスラケットが置いてある。夏のあいだ、使わなくなったのであろうオイルヒーターが置いてある。捨てるに捨てられないらしいマットレスが、なぜかむき出しで、コンクリートの壁に立てかけてある。
小さな、ぜんぶで十六世帯ほどしか暮らしていない、小ぢんまりしたマンションだ。築三十年は経過しているらしいが、造りもしっかりしているし、管理人さんの手入れが隅々まで行き届いているおかげで、古くささはほとんど感じさせない。地下にさえいかなければ、住人同様、とても感じがいい。