邪魔だなあと思っていたが、いざなくなると思うと、それはそれで寂しい。積み上がった荷物は、まるで生き物のような存在感を放ち、一朝一夕でどうこうさせはすまいぞ、という威厳さえたたえているように見えた。コンクリートの湿った壁にじっともたれる荷物たちが、何を感じ、何を思うのか、できれば少し聞いてみたくもあった。
翌月、すっかりきれいになった駐車スペースに、誰かがボウリングバッグをそっと置いていた。私が、にやっとしてしまったのは、言うまでもない。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としては短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞、最新刊「自分を好きになる方法」(講談社)で、第27回三島由紀夫賞を受賞。