おそらく、いちばん初めに駐車スペースに私物を置いた人だって、悪気はなかったのだろう。おっかなびっくりではなかったか。なにせ、このマンションの三階には大家さん自身が住んでいて、もちろん車も所有している。だから、初めはたぶん、そこにあっても然るべき品が、誰かの手により、そっと置かれたに違いないのだ。なんだろう。きっと、それは三輪車だ。
扇風機、虫捕り網、おもちゃ…
苦情を言ってきたり、とがめられたら、すぐ片付けるつもりだった。だが、誰も何も言ってくる気配はない。それならと次には、家の中に置くにははばかられる、普段めったに使わないもの第二弾が、少し思いきって投入されたのではあるまいか。なんだろう。それは、ゴルフセットだ。
こうなれば、あとはもうなし崩しだ。災害用の水のケースが置かれ出す。扇風機が置かれ出す。使わなくなった事務椅子が。虫捕り網が。そのうち、まねをする家族も現れ始める。キャンプ用品が、子供のおもちゃが、続々と運ばれる。そうして、ついに誰かが、専用の棚を設置する。パイプを組んだだけの簡易なものだが、二段、三段と積み上げれば、まだまだ無尽蔵にスペースが確保できる…。