これまで首都圏を中心にさまざまな祭りを撮ってきた。背丈が高過ぎるので、神輿(みこし)を担ぐとき膝を曲げていなければならず、つらかったことも良い思い出だ。
世界的な大都市の東京・首都圏でサラリーマンから主婦までさまざまな人が、文化的な交流を通じて、楽しさを分かち合う光景は素晴らしい。最も感動的だったのが、神奈川県茅ケ崎市で行われる「浜降祭」だ。早朝から神輿を担いで市内を練り歩き海岸を目指し、高波の中、40台もの神輿が一気に入水していく様子は忘れられない。
初めて祭りを目撃したのは、2002年10月、東京・三軒茶屋辺りだった。仕事帰りにレストランで昼食を一人で取っていた。突然、聞いたことのない不思議な笛の音色が。片言の日本語で、「ナニ? ナニ? ナニ?」と周りの人たちに聞き回った。「お祭りですよ」と教えてもらい、神輿のある場所に案内された。今まで体験したことのない掛け声、笑い声、エネルギー、生命力がみなぎっていて、その場に立ちすくんでしまった。太鼓の音がまるで地球の奥底から鳴り響く力強い大地の鼓動のようで、全身に地震のようなバイブレーションが走った。