地域活性化に向けて各地が模索を続けるなか、「コウノトリの郷」として有名な兵庫県豊岡市の取り組みが示唆に富んでいる。この地では、一度絶滅したコウノトリを増やすために始めた無農薬農法が普及。ほかにも歌舞伎や城崎温泉、かばんなど地域独自の資源を核にした街づくりに取り組んでおり、地方創生のモデルの一つとして注目される。
人工飼育の失敗経て
兵庫県北部に位置する豊岡市。「コウノトリ但馬空港」から車で約15分。訪ねた6月中旬、苗が伸びる水田では野生のコウノトリが餌を探していた。全体的に白く、くちばしと体の後ろが黒くて大きい。大空を別の2羽が飛んでいた。
近くに飼育拠点のコウノトリの郷公園とコウノトリ文化館がある。
「野生で78羽、飼育中が93羽の計171羽に増えました。年に30万人の観光客が来ます」。コウノトリ文化館の北垣和也自然解説員は説明する。
「かつてコウノトリは日本中にいました。明治期に狩猟で減り、太平洋戦争で巣づくりする松が伐採され、戦後は農薬で激減。日本最後の1羽が1971年にここで死に、絶滅しました」と中貝宗治市長は指摘する。